
子どもが吹いたシャボン玉。太陽の光を受けると、表面が虹のようにキラキラ輝きます。なぜ、透明なシャボン膜にこんな色が現れるのでしょうか? この現象の“容疑者”は 光の干渉 と呼ばれる物理現象です。
1. 薄い膜と光のいたずら

シャボン玉の膜は、わずか数百ナノメートル(0.0001ミリ程度)の薄さです。これは、光の波長(およそ 400〜700 nm)とほぼ同じスケール。
光は波の性質を持つため、このような極薄の膜に当たると、膜の表と裏から反射した光が「強め合ったり」「打ち消し合ったり」して、特定の色だけが強く見えます。これを 薄膜干渉(thin-film interference) と呼びます。
2. 位相反転というトリック

ここで重要なのが「位相反転」。光が空気(屈折率が低い)からシャボン膜(水と石けんを含む液体、屈折率が高い)に反射する際、波が180度ひっくり返ります。一方、膜の裏側で空気に抜けるときの反射では位相反転は起こりません。
この「反転するか・しないか」が干渉の模様を決めるポイントなのです。
3. 見る角度と膜の厚みが色を変える

なぜ、同じシャボン玉なのに場所ごとに色が違うのでしょう?
それは膜の厚さが均一ではなく、重力で下に液体が流れたり、風や揺れで膜が揺れ動いたりするためです。また、光が斜めに入るか正面から入るかでも干渉の条件が変わります。
つまり、「厚さの変化」+「入射角の違い」+「膜の屈折率」が組み合わさって、刻々と変わる色模様を生み出しているのです。
4. 黒くなる瞬間の謎

観察していると、シャボン玉が破裂する直前、ある部分が「黒っぽく」見えることがあります。これは膜が極端に薄くなり(数十ナノメートル以下)、ほとんどの可視光の干渉が打ち消し合ってしまうためです。
さらに最近の研究では、破裂前の膜では「マランゴニ流」と呼ばれる流れ(温度差や濃度差によって液体が動く現象)が色模様に影響していることもわかってきました。
5. 実は身近にある薄膜干渉

シャボン玉だけでなく、私たちの生活の中でも薄膜干渉は目にすることができます。
- 雨上がりのアスファルトに浮かぶ油膜の虹色
- 錆びた金属の表面にできる酸化膜の色
- メガネやカメラレンズに使われる反射防止コーティング(干渉を利用して光を打ち消す)
つまり、シャボン玉の虹色は、光と物質が織りなす「干渉の舞台」なのです。
6. 親子で楽しむ観察のヒント

お子さんと一緒にシャボン玉を観察するなら、
- 太陽の光を背にして見る
- 風の少ない日にじっくり眺める
- 黒っぽく見える瞬間を探す
といった工夫で、科学の面白さを体感できます。
まとめ
シャボン玉が虹色に輝くのは、薄い膜で光が干渉するから。膜の厚さや角度、位相反転の仕組みが組み合わさって、常に変化する色模様が生まれます。そして、この現象は油膜やレンズコーティングなど、私たちの身近な場所にも潜んでいます。
シャボン玉は、子どもにとって楽しい遊びであると同時に、大人にとっても「光の物理学」を知る小さな実験装置なのです。
✅ 出典(最新情報に基づく)
- Wikipedia. Thin-film interference. (2024年更新)
- Wikipedia. Soap film. (2024年更新)
- Stony Brook University, Laser Teaching Center. Thin Film Interference
- ArXiv. Thin Film Dynamics: Marangoni Flow and Film Instability. (2019)
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