導入:日常の不思議から始まる科学

青空を見上げて「なぜ青いのだろう?」、夕暮れ時に真っ赤に染まる空を見て「どうして色が変わるのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。
この現象を解き明かすカギは「レイリー散乱」と呼ばれる物理現象にあります。
レイリー散乱とは?

光は「波」の性質を持ち、波長の長さによって色が決まります。
- 短波長(青・紫) … 380〜500nm
- 中波長(緑・黄) … 500〜600nm
- 長波長(赤) … 600〜750nm
地球の大気中には酸素や窒素などの分子が存在し、太陽光が大気を通過するときに波長の短い光がより強く散乱されます。
この現象を「レイリー散乱(Rayleigh scattering)」と呼びます。
散乱の強さは波長の 1/λ⁴ に比例するため、青や紫の光は赤の光よりも約10倍散乱されやすいのです(NASA, 2015)。
なぜ空は青いのか?

本来なら紫の光も強く散乱されているはずですが、私たちが見る空は「紫」ではなく「青」です。その理由は2つあります。
- 太陽光の成分:太陽光には紫の波長成分が比較的少ない。
- 人間の目の感度:人間の視細胞は紫よりも青や緑に強く反応する。
そのため、散乱光の中で「青」がもっとも強く認識され、空は青く見えるのです。
なぜ夕焼けは赤いのか?

夕方になると太陽は地平線近くに沈みます。このとき光は大気を長い距離通過しなければなりません。
- 青や紫など短波長の光は途中でほとんど散乱され、観察者には届かない。
- 残った赤やオレンジなど長波長の光が届くため、夕焼けは赤く見える。
さらに、大気中の水蒸気やエアロゾル(微粒子)が多いときは散乱が強まり、より鮮やかな赤やオレンジのグラデーションが生まれます(Bohren & Huffman, Absorption and Scattering of Light by Small Particles, 2008)。
追加で知っておきたいポイント

- 朝焼けと夕焼けの違い:基本的には同じ原理ですが、朝は大気中の水蒸気や微粒子が少なく、より透明感のある色合いになります。
- 火星の空はなぜ青い夕焼け?:火星大気は二酸化炭素が主成分で粒子も異なるため、逆に夕暮れに「青っぽい」空が観測されます(NASA/JPL, 2015)。
- 環境指標としての空の色:大気汚染が強い都市では、夕焼けの赤が極端に濃くなることが報告されています。
まとめ

- 空が青いのは、短波長の光(特に青)が大気で強く散乱されるため。
- 夕焼けが赤いのは、光が長い距離を通過するときに短波長の光が失われ、赤い光が残るため。
- 空の色は大気の状態を映し出す「自然のスクリーン」でもある。
空を見上げるだけで、私たちは物理の法則や地球環境の変化を感じ取ることができます。
出典
- NASA (2015). Why is the Sky Blue?
- Bohren, C. F., & Huffman, D. R. (2008). Absorption and Scattering of Light by Small Particles. Wiley-VCH.
- NASA/JPL (2015). Mars’ Blue Sunsets Explained by Curiosity Rover.
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