導入:見えない「つながり」のミステリー

カフェに入ってスマホを取り出すと、勝手にWi-Fiにつながる。家でも、ルーターひとつでPCもゲーム機も同時に通信できる。
でも、よく考えてみれば不思議です。目に見える線もないのに、どうやって情報は届いているのでしょう?
その正体は、見えない「電波」。本記事では、Wi-Fiを動かす科学の犯人=電波を追跡していきます。
第一章:犯人の正体は「電波」

Wi-Fiは 電波(電磁波) を利用した通信方式です。電磁波は光やラジオ波、X線なども含む「波の仲間」で、人間の目に見えるのは可視光だけ(総務省, 2023)。
Wi-Fiでは主に 2.4GHz帯 と 5GHz帯 の電波を使います。
- 2.4GHz:壁を越えやすく遠くまで届くが混雑しやすい
- 5GHz:高速通信が可能だが、直進性が強く障害物に弱い
つまり、広域をカバーする「しぶとい犯人」と、スピード勝負の「俊敏な犯人」が共犯関係を結んでいるのです。
第二章:ルーターは「電波発信装置」

家庭やオフィスにある Wi-Fiルーター は、まるで小さな放送局。
アンテナから電波を放ち、スマホやPCのアンテナがそれをキャッチして通信します。
送受信されるデータは 0と1のデジタル信号。小さな「パケット」と呼ばれる断片に分けられ、光の速さで空間を行き来します(Cisco, 2022)。
見えない痕跡を残しながら動く「犯人の足取り」のように。
第三章:犯人を守る「暗号」

もしWi-Fiの電波がそのまま流れていたら、誰かに盗聴されても不思議ではありません。
そこで登場するのが 暗号化。
- 初期の WEP は脆弱で簡単に突破された
- WPA2 は長らく標準だったが、攻撃手法が開発された
- 現在主流の WPA3 は、より強固なセキュリティを実現(Wi-Fi Alliance, 2023)
犯人が残す「暗号文」を解くには、正しい鍵を持った機器だけが許される、という仕組みです。
第四章:干渉と不安定の真相

「Wi-Fiが遅い」「つながらない」とイライラすることはありませんか?
その多くは 電波干渉 によるものです。
- 電子レンジ(2.4GHzを利用)
- 他人のWi-Fi
- Bluetooth機器
こうした「容疑者」たちが周波数帯を取り合い、電波が乱れるのです。
最近は メッシュWi-Fi や ビームフォーミング といった新技術で、電波を効率的に届ける工夫も進んでいます(IEEE, 2024)。
第五章:進化するWi-Fi規格

Wi-Fiは常に進化中です。
- Wi-Fi 6 (2019〜):高速・省エネ・多数同時接続に強い
- Wi-Fi 6E (2021〜):6GHz帯を活用し、さらに快適に
- Wi-Fi 7 (2024〜順次普及):最大速度4倍、低遅延でVRや高画質配信に最適(Wi-Fi Alliance, 2024)
犯人は、時代に合わせて「変装」しながら進化を続けているのです。
結論:見えない犯人は味方だった

Wi-Fiは目に見えないからこそ不思議に思えますが、電波という犯人は実は「味方」。
世界中の人と情報を結ぶ、縁の下の力持ちです。
次にWi-Fiが自動でつながったとき、背後で働く「見えない犯人=電波」を少しだけ思い出してみてください。
📚 出典
- 総務省「電波の基礎知識」(2023)
- Wi-Fi Alliance「Wi-Fi CERTIFIED WPA3™ Security」(2023)
- Cisco Networking Academy「Networking Basics」(2022)
- IEEE Communications Magazine「Advances in Wi-Fi 6/6E/7」(2024)
- Wi-Fi Alliance「Wi-Fi 7 Launch Overview」(2024)
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