なぜ雲は浮くのか?積乱雲の重さと浮力の科学を徹底解説

導入:空に浮かぶ巨大な雲の謎

青空にぽっかり浮かぶ白い雲。時には入道雲のように山のようにそびえることもあります。
しかし不思議ではありませんか?あれほど大量の水を含む雲が、なぜふわりと空に浮かび続けることができるのか。重さと浮力の“重量トリック”を、最新の気象学の知見を交えて解明します。


雲の重さはどのくらい?雲水量と体積の関係

  • 発達した積乱雲には10万〜1百万トン規模の水が含まれると推定されます。体積が大きく、雲水量(cloud liquid water content; LWC)が高いほど重くなります。[NOAA “How Much Does a Cloud Weigh?” 2023]
  • 一方で、観測される LWC の典型値は 0.01〜3 g/m³ の範囲。雲の体積や混濁度が異なれば、重さも大きく変動します。

つまり「雲は重いが、その重さは雲の種類・体積・湿度条件によって大きくばらつきがある」ということを押さえておきましょう。


雲はなぜ落ちずに浮かぶか?粒のスケールと浮力のメカニズム

  1. 微小な水滴のサイズ
    雲を構成する水滴サイズはおよそ 10〜20マイクロメートル。これは人の髪の毛の太さ(約100µm)よりずっと小さく、この水滴では重力より空気抵抗やブラウン運動・対流の影響が大きく、落下速度(終端速度)が非常に遅いため、長時間浮遊できます。[大学気象教育資料]
  2. 上昇気流の存在
    地表が日射で暖まるとその空気が軽くなり上昇します(対流)。積乱雲ではこの上昇気流の速度が数 m/s から 10〜50 m/s に達することもあり、この強い上昇流が雲の重さを支えます。
  3. 空気の密度差と浮力
    暖かく湿った空気は密度が低く、周囲の空気との温度・湿度差から浮力が生まれます。雲を含む空気塊がこの浮力によって支えられるため、雲粒は「落ちる」より「浮かぶ」状態を保ちます。

雲の生成に必要な条件:凝結核と雲の種類

  • 凝結核(Condensation nuclei, CCN):塵、海塩微粒子、硫酸エアロゾルなど、水蒸気がこれに付着して雲粒ができる種になります。これがないと雲はできにくい。[Recent study, 2022][]
  • 雲の種類と浮く高さの差
    • 低い雲(層雲・積雲):水滴中心、浮遊高度低め
    • 高い雲(巻雲等):氷晶中心、高高度で薄い雲
    • 積乱雲:低層から対流圏上部まで垂直発達、大量浮力と雲水を含む

雲が雨になるプロセス

  • 雲粒が集まり、大きく成長する(衝突・合体)
  • 成長して直径が 0.1mm を超えると、上昇気流で支えきれず落下を始める
  • こうして「雨粒」となって空から降ってきます。

このプロセスが雲が「ただ浮くだけでなく」降水をもたらす仕組みです。


雲は気候・天気にも影響する

  • 日中:太陽光を反射して地球表面を冷やす
  • 夜間:地表からの赤外線を取り込んで断熱作用となる
    この反射と吸収のバランスが、気候変動モデル中で非常に重要です。[IPCC, 2021]
  • また、上昇気流の強さや雲の発達度により雷・突風・豪雨などの気象現象を引き起こすこともあるため、予報や防災との関係が深いです。

地球外の雲と比較

  • 木星や土星:アンモニアや水の氷からなる雲層
  • 金星:硫酸の雲が厚く覆う
    これらは物質・温度・圧力条件が異なるため、浮遊の仕組みも種類によって変化しますが、「浮く・形成される・落ちる」という基本原理は共通です。

まとめ:自然のバランスの象徴

雲は巨大で重い水の塊ですが、粒子サイズ・上昇気流・浮力の相互作用によって空に浮きます。
積乱雲はその典型例で、天気や気候にも大きく関わる存在です。
次に空を見上げるときは、雲が空に浮かぶ「軽さ」と「重さ」の緻密なバランスを感じてみてください。


出典

  1. NOAA. How Much Does a Cloud Weigh? (2023) — 雲の質量見積もり。
  2. Wallace, J.M. & Hobbs, P.V. Atmospheric Science: An Introductory Survey, Academic Press, 2006 — 雲粒サイズ・雲の種類。
  3. 気象庁「降水のしくみ」公式ページ(2024年更新) — 雲から雨へのプロセス。
  4. IPCC, Climate Change 2021: The Physical Science Basis — 雲の気候への作用。
  5. Recent study (2022). The role of condensation nuclei in cloud microphysics.

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